新型インフルエンザ・パンデミック
|
| 1.インフルエンザ・パンデミックとは何か |
 |
インフルエンザ・パンデミックは、世界の人々が免疫をもっていない新型インフルエンザが世界規模で大流行したときに発生する。その結果、複数の地域で発症率と死亡率の高いインフルエンザが同時に流行する可能性がある。都市化と人口密度の増加に加えて輸送手段や交通機関の発達に伴い、新型インフルエンザウイルスによる流行が世界中に急速に広まる危険性がさらに高くなっている。このような世界的流行が1918年、1957年、1968年に発生しており、次の大流行が発生するのも時間の問題だという共通認識がある。 |
| 2.新型インフルエンザ大流行の危険性は? |
| |
世界的大流行が発生するのは、新型インフルエンザウイルスが出現し、それがヒトに感染して重い病気を引き起こし、ヒトからヒトに簡単に継続的に広まる、という3条件が満たされたときである。H5N1型ウイルスは最初の2つの条件を十分に満たしている。すなわち、ヒトにとって新型のウイルスであり(H5N1型ウイルスがヒトの間で広く蔓延したことは、いまだかつてない)、これまでに100人以上が感染して半分以上が死亡している。H5N1型のような新型ウイルスが出現したら、誰も免疫をもっていないだろう。
したがって、ウイルスがヒトからヒトへと効率的に、また持続的に感染する能力を得るという点を除いて、世界的大流行勃発の必要条件が揃っていることになる。ヒト感染の機会がある限り、H5N1型ウイルスがこの能力を獲得する危険性がある。同様にヒト感染の機会は、このウイルスが鳥の間で伝播しつづけている間は存続し、その状態が今後数年間続く可能性がある。 |
| 3.新型インフルエンザの治療薬はあるのか? |
| |
最も重要で唯一のインフルエンザ予防法はワクチンであり、新型インフルエンザの大流行対抗策に欠くことのできない要素である。大流行の初期で、新型ウイルス株に対するワクチンがまだない時期には特に、抗ウイルス薬も流行中のインフルエンザの予防と治療に重要な役割を果たすと思われる。したがって抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は、大流行対策戦略の重要な柱になる。現在流行しているH5N1株がM2阻害薬(アマンタジンおよびリマンタジン)に耐性を有していることから、大流行の際に使えるのはノイラミニダーゼ阻害薬のリレンザとタミフルだけと考えられている。 新型インフルエンザの大流行による死亡例のほとんどは、ウイルスによる直接の作用によるものと思われるため、抗生物質では治療できない。ただし、インフルエンザの多くの場合、肺の二次的細菌感染およびその他の病気が併発するため、抗生物質や喘息治療薬など、他のGSK製品が新型インフルエンザ大流行の際に救命治療薬となる可能性もある。
|
| 4.リレンザとはどういう薬剤なのか? 新型インフルエンザまたは鳥インフルエンザの治療に使えるのか? |
| |
リレンザは通常のインフルエンザの治療のための医療用医薬品であり、EUおよび米国以外の多くの国々では、インフルエンザの予防薬としても承認されている。米国では予防を適応とする承認申請をすでに(2005年11月4日)提出しており、続いてEUでも申請を提出した。リレンザはディスクヘラーという吸入器具を使用して上気道の表面に到達させる吸入剤である。鳥インフルエンザ患者でのリレンザの試験は行われていないが、鳥インフルエンザに対して抗ウイルス活性を示した、in vitroおよび動物モデルにおけるデータがある。インフルエンザ大流行の治療においてもリレンザが有効であろうと、広く考えられている。 |
| 5.リレンザ供給の状況はどうなっているか? |
| |
リレンザへの注文が過去の需要をはるかに超えているため、当社の現在の供給量は限られている。GSKとしては今後の供給量を大きくできるよう、リレンザ製造能力の拡大に向けて大きな投資をしている。それにもかかわらず、短期的な需要は供給可能量を超えると予想される。 |
| 6.新型インフルエンザに対するワクチンの開発と製造の現状は? |
| |
新型インフルエンザウイルスに有効なワクチンは、まだない。だがGSKはワクチンの「プロトタイプ」を開発した。2006年の初めに、現在入手可能なH5N1型ウイルスに対する臨床試験を開始する予定である。 GSKで開発中の対H5N1型ワクチンはアルミニウム・アジュバントを使っている。これにより生体の免疫反応を高めて、一人当たりの用量をより少なくすることが期待される。大流行において多くの人々に投与するには必須の条件である。 新型インフルエンザの大流行が発生した場合、WHOから具体的な流行ウイルス株について通達され、あわせてワクチンの組成と使用について勧告が行われる。ワクチンの最初のロットが出荷されるのは、WHOからの流行株の通達後3〜6カ月になると予想される。 GSKは、ワクチンの効果を高めることができる、新しいアジュバントを含有する第二世代のワクチンも製造する予定である。それによってさらに用量を減らすことができ、抗原の節約にもなる。その結果、生産力の向上にもつながる。 この新しいアジュバントは、変異株に対する交差免疫をも誘導すると考えられる。 当社の新型インフルエンザ大流行に対する次世代ワクチンは、特定の新型インフルエンザウイルス株が出現する以前でも予防接種可能と考えている。接種した結果、H5N1がヒトの体内で変異して新型インフルエンザが大流行したとしても、少なくともある程度の免疫効果が期待できる。この結果、大流行発生時には、その新型インフルエンザウイルス株に対するワクチンを通常2回接種しなければならないところを、1回で済むことになる。
|
| 7.GSKのその他の活動は? |
| |
GSKは、新型インフルエンザの世界的大流行に備えて、世界各国の政府、社員、保健当局を全面的にサポートする意向である。すでに、大流行に備えて下記の措置を含めた対策を講じている。 当社のインフルエンザワクチン製造能力を高め、リレンザの生産量を上げるために、20億ドル超を投資。具体的には、ドイツのドレスデン工場におけるワクチン製造能力を倍増、カナダのワクチン・メーカーID Biomedical社買収の提示、リレンザ製造能力増加のための他のメーカーとの提携の検討など行っている。 最近獲得した米国ペンシルベニア州Marietta拠点における、細胞培養などワクチン製造の新技術の研究開発およびより強力な新規アジュバントの研究。 新型インフルエンザのGSKグループに対する影響を最小限にするための対策案の検討。 当社が講じる対策の連携を図るために医薬品部門の社長、デビッド・スタウトが直接指揮する組織横断的な計画策定チームを編成。
|
| 8. 大流行は防げるのか |
| |
確かなことは誰にもわからない。大流行を防ぐ最良の方法は鳥からウイルスを駆除することだろうが、近い将来にそれができる可能性は、ますます低くなっている。 WHOは2006年の初めまでにリレンザなどの抗ウイルス薬を300万人分備蓄しようとしている。大流行が勃発しそうになったら、それを予防的に使う可能性がある。WHOは、インフルエンザウイルス監視ネットワークを利用して大流行の発生を宣言することになっている。大流行を宣言したら、WHOが主導して大流行制御のための適切な戦略を明らかにすることになると思われる。
|
| |
|
| 通常のインフルエンザ |
| |
|
| 9.インフルエンザとは何か |
| |
インフルエンザはインフルエンザウイルスの一種によって引き起こされる。多種の動物およびヒトのインフルエンザウイルスがある。毎年、何百万人もの人が通常のヒトインフルエンザウイルスに感染する。このインフルエンザは呼吸器の伝染性感染症で、あらゆる年代の人々が罹患する。多くの場合、インフルエンザは短期の病気で自然治癒が可能だが、乳幼児、高齢者、慢性疾患患者では重症化し、命にかかわる合併症が発生する場合もある。インフルエンザによって毎年、世界中で25万人ないし50万人が死亡する。 |
| 10. インフルエンザはどのように伝播するのか |
| |
ヒトインフルエンザは感染者の咳やくしゃみで放出される飛沫によって、人から人へと簡単に空気感染する。 |
| 11. インフルエンザの症状は? |
| |
通常のインフルエンザの代表的症状には、発熱、のどの痛み、咳、鼻づまり、体の節々の痛み、極度の疲労感、頭痛などがある。ほとんどの人は1〜2週間で完治する。 高リスク群では、インフルエンザの合併症が発生する場合がある。インフルエンザの合併症には細菌性肺炎や脱水症、うっ血性心不全、喘息、糖尿病などの慢性疾患の悪化などがある。小児では副鼻腔炎や耳の感染症が発症する場合がある。
|
| 12. インフルエンザの予防はどうすればできる? |
| |
ヒトインフルエンザとその重篤な合併症を防ぐ第一の方法は予防接種である。60年以上前から、さまざまなインフルエンザワクチンが作られ、使われてきた。安全で免疫をつくるワクチンである。どのワクチンもそうだがインフルエンザワクチンも、感染の可能性があるほとんどの人に予防効果があるが、全員に効くわけではない。 |
| 13. 通常のインフルエンザの治療法は? |
| |
インフルエンザの効果的治療は、病気を早く認識することにかかっている。多くの人にとって問題なのは、インフルエンザの初期症状が風邪など、同じように発熱を伴う別の病気に似ていることである。インフルエンザはノイラミニダーゼ阻害薬リレンザ(吸入用ザナミビル)やタミフル(オセルタミビル)などの抗ウイルス薬で治療できる。 |
| |
|
| 鳥インフルエンザ |
| |
|
| 14. 鳥インフルエンザとは何か |
| |
「鳥インフルエンザ」とは、ふつうは鳥類にのみ、まれに豚にも感染するウイルスによる動物の伝染病である。鳥インフルエンザウイルスは種特異性がきわめて高いが、まれに種の壁を越えてヒトにも感染する。 家禽の場合、鳥インフルエンザウイルスが引き起こす感染症には主として病原性の低いものと高いものの2種類がある。いわゆる「低病原性」のものは通常、軽い症状(毛羽立ち、産卵量の低下)を起こすだけで、発見されないうちに簡単に治癒する場合もある。高病原性のものは、はるかに劇的である。あっという間に群れに広まり、多臓器を侵す病気を引き起こし、多くの場合48時間以内に死亡率が100%に近づく。
|
| 15. ヒトにおける鳥インフルエンザの症状はどんなものか |
| |
典型的なインフルエンザ様症状、たとえば発熱、咳、のどの痛みと筋肉痛のほか、眼の感染症、肺炎や重症の呼吸器疾患などがある。
|
| 16. 人はどのようにして鳥インフルエンザに感染するのか |
| |
感染した鳥またはその糞で汚染された場所や物との直接接触が、現在のところヒト感染の主な経路と考えられている。これまでのところ、ほとんどのヒト感染例は、多くの世帯が小規模の養鶏をしており、鶏が自由に動き回ったり、ときには家の中や子供が遊ぶ区域に入ったりすることが多い農業地帯で発生している。 |
| 17. 鳥インフルエンザに大きな注目が集まっているのはなぜか。新型インフルエンザの世界的大流行になる可能性があるのか。 |
| |
H5N1型と呼ばれている鳥インフルエンザは、人から人に簡単に伝播できるものに変異した場合には、インフルエンザの世界的大流行の原因になる可能性があると見られている。毎年流行する通常のヒトインフルエンザ株と異なり、人々はH5N1に対する免疫がないため、より多くの人々により重篤な影響を及ぼしかねない。 2003年の半ばに東南アジアから発生した現在の高病原性鳥インフルエンザは、史上最大で最も深刻のものである。これほど多くの国で同時に鳥インフルエンザが発生し、これほど多くの鳥が処分された例は、過去にはなかった。 病原体のH5N1型ウイルスは格別に強靭なことがわかっている。推計1億5千万羽の鳥が死んだり処分されたりしたにもかかわらず、ウイルスが現在、インドネシアとベトナムの多くの部分、カンボジア、中国、タイの一部、可能性としてラオスでも蔓延していると考えられている。この数カ月間で、モンゴル、カザフスタン、ロシア、トルコ、ルーマニア、クロアチアでもH5N1の発生が認められている。ウイルスが渡り鳥を含む各種の野生鳥類の間で伝播しているため、鳥インフルエンザの制御が困難になっている。
|
| 18. 鳥インフルエンザがヒトに感染しているのはどこ? |
| |
現在発生している鳥インフルエンザのヒト感染例が確認されているのは、カンボジア、インドネシア、タイ、ベトナム、中国、トルコの6カ国である(2006年1月7日現在)。
香港では過去2回の発生例がある。1997年に記録されている最初のH5N1のヒト感染例では、18人が感染して6人が死亡した。2003年初めには、中国南部に旅行して帰国した香港の家族で2人が感染し、1人が死亡した。
|
| 19. 鳥のウイルスは簡単に鳥から人に伝わるのか |
| |
それはない。今回のインフルエンザで100人以上が罹患しているが、特に露地飼いが一般的な地域では膨大な数の鶏が罹患し、それに伴ってヒト曝露の機会も非常に多いことを考えれば少数である。同じように曝露して、感染する人としない人がいる理由は、今のところわかっていない。
|
| |
|