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子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)

 

発がん性HPVの感染からがん化への過程

発がん性HPVの感染が持続すると、そのごく一部が浸潤がんへ進行すると考えられています。
発がん性HPVの感染は、性交渉のある女性であればありふれたものであり、誰でも感染の可能性があります。しかし発がん性HPVに感染しても、ほとんどの場合感染は一過性で、ウイルスは自然に体の外へ排除されてしまいます。しかしウイルスが排除されずに長期間感染が続くと(持続感染※1)、ごく一部のケ−スで子宮頸部上皮内腫瘍(CIN:cervical intraepithelial neoplasma)となり、さらにその一部が約10年の期間をかけて浸潤がんになると考えられます。CINは、細胞診ではLSILやHSILと診断される、前がん病変の状態です。
したがって、子宮頸がんは、がんになる前の前がん病変を発見し、治療して浸潤がんへの進行を防ぐことが可能な期間が約10年間存在するともいえます。

※1 HPVの持続感染
ここでいうHPVの持続感染とは、感染巣が広汎にあり、それぞれからウイルス増殖が起こるために全体として慢性的にウイルスが検出される状態と考えられています1)

1)川名敬ほか:化学療法の領域 22(10):1521-1528, 2006

図:発がん性HPVの感染と子宮頸がんへの移行
発がん性HPVの感染と子宮頸がんへの移行(図)
 
正常な上皮とHPVの感染(1
HPVは、扁平上皮の基底層にある基底細胞に感染します。

細胞のコイロサイトーシスとCIN1※22
HPVに感染すると、コイロサイトーシスという細胞変化を起こすことがあります。コイロサイトーシスとは、上皮細胞の核周囲の細胞質が空胞状に広く抜けており、空洞の輪郭は不整形で、細胞質辺縁が厚く肥厚しています。
CIN1は、組織学的には扁平上皮の1/3以内に増殖性変化が観察されるもので、HPV感染によって引き起こされた一種の形態変化ととらえられています。したがって、この段階までは治療を要さず、経過観察されるのが一般的です。
CIN1からCIN3に進行する率は極めて低く、研究者によって成績は異なるものの、おおむねハイリスクタイプのHPVに感染したCIN1の3〜6%が3年以内にCIN3に進行します。

CIN2/3※23
組織学的には、CIN2は扁平上皮の基底膜側から2/3以内に、CIN3は上皮2/3以上から全層に増殖性変化が観察されるものです。CIN2/3は、腫瘍性性格を有する細胞群が増殖した前がん病変と考えられ、この段階からはなんらかの治療が考慮されます。
CIN 2の30〜60%がCIN 3に進行すると考えられ、この進行に要する期間は50歳以上では70〜80ヵ月、25歳以下では54〜60ヵ月です。

浸潤がん(4
組織学的に基底膜を越えて増殖性変化が観察されるものです。浸潤がんの発生は、多くの場合HPV感染から10年以上が経過しています。

※2 上皮内腫瘍の分類について
子宮頸がんは、浸潤がんになる前に、細胞診により上皮内腫瘍の段階で発見することができ(クラスIIIa以上に相当)、この上皮内腫瘍は「軽度異形成・中等度異形成・高度異形成・上皮内がん」に分けて表記されてきました。しかし、高度異形成/上皮内がんの両者は混在する例が多く、形態学的な鑑別は必ずしも容易ではなく、表層分化の有無の解釈が難しいなどの理由で、これに代わる用語として子宮頸部上皮内腫瘍(CIN:cervical intraepithelial neoplasma)という用語が提唱されました。 SILは子宮頸部細胞診の報告様式のガイドラインを定めたベセスダ分類で採用された用語ですが、最近では組織診断でも用いられるようになってきており、軽度扁平上皮内病変(LSIL:low-grade SIL)と高度扁平上皮内病変(HSIL:high-grade SIL)に分類され、HPV感染による細胞変化とCIN1はLSILに、CIN2/3はHSILに相当します。

発がん性HPVの感染と子宮頸がんへの移行(図)
 


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